浜松市の旧浜松銀行協会(浜松市栄町3-1)で、スモール&ビューティフル:スイス・デザインの現在展が開催中である(618日まで)。この展覧会は「小さく豊かに生きる知恵」を実践するスイスの現代デザインを、ものづくりの街・浜松で、歴史的建造物を活用して紹介するものである。あわせて、528日には静岡文化芸術大学で、「人を豊かにするデザインの力・スイスから学ぶこと」と題したシンポジウムも行った。展覧会とシンポジウムの様子を報告したい。

 

スモール&ビューティフルとは

 この展覧会は、スイスが自国のデザインを世界各地に紹介するもので、日本では昨年9月から東京・秋葉原、相模原と巡回し、浜松での展示は3カ所目である。スイスはドイツ、フランス、イタリアに囲まれた小国であるが、美しい自然と牧歌的な風景が連想される国である。まずは、このスイスのイメージを表題は示している。

 展示品は、巡回用に整然と木箱に収められ、これを展開して展示している。このパッケージのアイディアも表題と重なる。内容は、アルプスを背景とした登山用品、家具、調理器具、ファッション、グラフィックデザイン、出版文化などからなるが、スイスのデザインで知られているのは、時計やアーミーナイフ、医療機器などの小さく、精密な製品であろう。スイスも自認しており、表題はこれらの製品を示すものともなっている。展示品はいずれも、日常生活の身の回りの品々であり、これら誰もが普通に使うものの質が高いことが、「生活の豊かさ」を示しているといえよう。この「豊かさ」は、今後の成熟型の社会において、ひとつの目指すべき方向である。自然に親しみながら、コンパクトに、よいデザインの品々を使いながら暮らす、小さく、美しい生活こそ、われわれが学ぶべきものではないだろうか。

 

なぜ浜松か

 この展覧会が浜松に巡回することになったのは、浜松がものづくりの街として世界的に知られ、浜松側にもこのことを積極的に発信し、まちづくりにもつなげていきたいという思いがあったからである。

 シンポジウムではスイスを参考に、浜松が何を大切にし、何を伸ばさなければならないかを考えた。スイス・デザイン誌のエディターであるメレット・エルンスト氏の基調講演の後、河原林桂一郎静岡文化芸術大学デザイン学部長、吉良康宏ヤマハ(株)デザイン研究所所長、建築家の長谷守保氏の浜松側の3名に、三宅理一慶大大学院教授を加えたディスカッションでは、浜松の高い技術力とクラフトマンシップにスイスとの共通性が指摘され、楽器や建築に代表されるように、使い続けていくことで固有の価値が増すことの大切さが述べられた。また、スイスは多民族、多言語で、しばしば直接投票が行われることで知られるが、市民が生活のあり方としてのデザインに当事者意識をもつことの重要性も挙げられた。デザインという語は、単にものの形にとどまらず、生活のあり方をかたちにすることを意味しているのである。

 今回の展覧会とシンポジウムのために、地元の産官学が一体となった実行委員会が組織された。これをきっかけに、浜松のデザイン・マインドを拡げていきたいと考えている。

土屋和男(常葉学園大学助教授・スイス・デザインの現在浜松展実行委員会事務局長)

 

展覧会は、12:00-18:00(金曜日は20:00まで)

休館日:火曜日、水曜日

入場料:一般500円、学生400円、中高生以下・65歳以上無料

お問い合せ:実行委員会事務局053-413-3993(長谷守保建築計画内)